(e)merging.
A Third 
Wave Feminist Page

第3次フェミニズム的な雑誌など

A Girl's Guide to Taking over the World: Writings from the Girl Zine Revolution (1997)

著者:Tristan Taormino
New York: St. Martin's Press

マスメディアにおいてフェミニズムの主張が歪曲されるのは珍しい事ではありませんが、メディアにおける第3次フェミニズムの描写は「商業主義・消費主義」のステレオタイプ一色。 それをそのまま信じて、「いわゆる第3次はフェミニズムではない」と批判する第2次のフェミニストたちが後をたたないのは問題ですが、商業主義と正反対の方向に向いているのが、損得勘定度外視で趣味や政治的主張や身近な事を書き綴った個人誌。 90年代は一般に「zine」と呼ばれるコピ−機で作った個人誌が10〜20代の女性を中心にブームとなったのは、誰でも比較的安価に情報発信できるインターネットの広まりと同じ傾向の現象かも。 そういう大小さまざまなzineに載せられた記事の中から選りすぐって編集したのがこの本。 編者のTristan Taorminoはレズビアン向けのポルノ雑誌「On Our Backs: The Best of Lesbian Sex」の編集者というのも面白い。

Girl Zine

Bitch: Feminist Response to Pop Culture

今アメリカで最も内容のお勧めのフェミニズム系の雑誌といえばこの「Bitch」。 タイトルは、名詞として「モノを言う女性」に対する最大限の侮辱語であり、同時に「不平を言う」という意味の動詞にもなる事から付けられたもの。 編集長のLisa Miya-Jervisは今私(Macska)が最も尊敬するフェミニストの一人。 雑誌のテーマは「ポップ・カルチャー」ですが、Miya-Jervisはその範囲を最大限に広く取る考え方のようで、テレビや雑誌にはじまり社会現象一般について第3次世代のフェミニストたちによる鋭い批評がちりばめられています。 現代女性の悩みに、「第2の性」を書いたSimone de Beauvoirはじめ既に他界した過去のフェミニストたちの著作を繋ぎ合わせて答える変わった人生相談(?)など、常に知的なユーモアに溢れた紙面も魅力。 記事がいくつか読めるウェブサイトはこちらで、日本からの購読も可能。

Bitch

BUST: The Voice of the New Girl Order

第3次フェミニズム的な雑誌の中では飛び抜けて部数が多いのがこの「BUST」。 このタイトルも「Bitch」と同じく女性の「バスト」とスラングの「壊す」という2つの意味をかけたもの。 部数が多いのはおそらく徹底的にタブーを排したセックス関係の話題をブチまけているいるからで、社会批評的な記事はやや弱め。 セックス関係の記事でも、以前から「記事が異性愛に偏重し過ぎだ」との批判があり、最近ではレズビアンやバイセクシュアルの女性に人気があるセックス・コラムニストSusie Brightの相談コーナーを入れるなど努力はしている様子。 編集をしているのはMarcelle KarpとDebbie Stollerというニューヨークの2人の女性。 ウェブサイトはこちらで、日本からの購読も可能。 右の画像は、過去の「BUST」に掲載された記事を集めた本。

BUST

hipMama

子どもを持つ第3次世代の女性たち(一部男性も)にカルト的な人気を誇る子育て雑誌。 編集長のAriel Goreは私(Macska)の地元でもあるポートランドに住んでいるので面識はありますが、カルト的というのは全然大袈裟じゃなく、講演の後には彼女と一言話したいという長い長い列が出来ます。 社会が押し付ける母親という役割だけで自分を定義する事を拒否し、子どもをちゃんと育てながらも社会的にも政治的にもアクティブな一人の人間として生きようとする今の女性にウケただけあって、子どもを持たない人が読んでも十分面白い優れた内容です。 活発な議論や情報交換が交わされる掲示板も備えたhipMamaのウェブサイトはこちら。 右の画像はGoreの2冊目の著書。

hipMama

danzine

hipMama」と同じくポートランドをベースとした雑誌で、セックスワーカー(セックス産業で働く人たち)によるセックスワーカーのための情報誌。 発行しているのはセックスワーカーたちの労働者としての権利と身体的安全を擁護し、健康や金銭の管理などの情報を広めている非営利団体。 ストリップ劇場などでダンサーたちに無償で配られている他、一部の書店でも手に入る。 内容は有名なポルノ女優のインタビューや、安全に搾取されずに働くための助言、セックス産業における労働運動の最新ニュース、税金の確定申告の仕方など、当事者ならではの情報が満載。 こちらのウェブサイトでもいくつか記事が読めます。 この雑誌、アメリカ・カナダ・イギリスではタワーレコードのお店でも販売されているので、日本でも要望を出せば将来的には扱ってくれる可能性アリ。 今すぐ欲しい方は、Macskaにメールで相談すれば何とかなるかも。

danzine

Alice: For Women on the Other Side of the Looking Glass

廃刊になった「HUES」に代わって登場した、人種的マイノリティの女性を主な対象とする雑誌。 他のメディアでは脚光を浴びる事の少ない非白人の女性を前面に押し出して彼女たちの関心を誘う記事を載せているのはいいものの、一部の白人のライターの無神経な表現がやや難点。 例えば、商業主義を嫌ってレコ−ド会社からのオファーを蹴り政治的に過激な歌を歌っている中国系&バイセクシュアルのシンガー、Magdalen Hsu-Liのインタビュ−記事の中で彼女を「将来のリッキー・マーティン」と呼ぶのは褒め言葉でも何でもなく、私が本人に聞いた所彼女も憤慨していました。 とは言え、まだ創刊されたばかりなので今後に期待しています。 ウェブサイトはこちらです。

HUES: Hear Us Emerging Sisters

ミシガン大学に在学していた三人の女性が、ファッションとダイエットの情報ばかりの女性誌に飽きて創刊したミニコミ誌が起源。 プロのモデルでなく、あくまでさまざまな人種や体型の普通の女性が普通に登場するスタイルが地元の20代の女性たちに評判になりフェミニズム系の出版者に買収されたものの、一般の雑誌として商業的に出版するだけの部数をさばけずに1999年に廃刊。 この雑誌を通して登場した多くのフェミニストたちが今第一線で活躍している所を見ると、使命は果たしたのかも知れません。 創刊に中心的に関わった編集者Ophira Edutはボディ・イメージについてのアンソロジー「Adios, Barbie」も出版し、一時は「HUES」の読者層である若い女性の読者が欲しい老舗フェミニスト雑誌「Ms.」の編集にも加わっていました(が、「Ms.」の若い女性に対して侮辱的な紙面構成や運営体制は知れ渡っているので効果なかったり・・・)。 右の写真は最終号。

HUES

#1 代表的な第3次フェミニストたちの本
#2 第3次フェミニズム的な雑誌など
#3 第2次フェミニストたちとの対話
#4 第3次フェミニズムと同時代の動き

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